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2017/02/28 長い夢

 今日は正午過ぎには仕事が終わり、早く帰って洗濯をしたあと、ベッドに寝転がっていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。目がさめると部屋が暗くなっていて、一瞬何が起こったかわからなかった。その間に長い夢を見たからだ。実際眠っていたのは4時間くらい(昼寝にしては結構寝た)だけど、夢の内容はまる1日くらいあったと思う。

 

  ※

 

 私は恋人と連れ立って電車で出かけ、どこかの岬に来ていた。風が強く、波のしぶきが眼下から吹き上がってきた。風は緑の短い芝も揺らした。風が草の上を吹き渡っていくとき、そこにできる模様は、豊かな毛並みの犬の背を見えない手が撫でているようにも見えた。我々はそこで手を繋いで、しばらくその景色を見ていた。他愛のない話をしながら。

 岸壁の下にもいくつか海面に顔を出した岩場があった。その上に、私は見たくないものを見つけてしまった。裸の男がうつ伏せになって、岩に打ち上げられていた。近くの水が濁っているのを見て出血があることが分かった。それを恋人に見せたくないと思った私は、早くその場から離れたかった。

 しかしどうやってそんなことを伝えればいいのだろう。せっかく長い旅(長かったような気がする)をして辿り着いた場所なのに、滞在時間がわずかというのは、申し訳ないような気がした。とりあえず私は恋人を、海の見えない方向に向かせて、抱きしめてみた。恋人はいつもそうするように目を閉じた。私は海のその死体を見ながら、どうしようか考えていた。

 死体は死体ではなかった。岩の上の裸の男はやおら起き上がり、皮膚の裂けた腹をあらわにし、こちらを見た。私の顔を見て、にやりと笑った。

 

  ※

 

 その後なんとかしてその場を離れたものの、我々の行く先々にその裸の(太っていた)男が現れ、私だけがその男を発見し、その度に適当な理由をつけて他所に移動していった。なぜそこまでして、男の存在をひた隠しにいていたのか分からない。「変な奴がいるんだよ」と言ってしまえば楽だったのかもしれない。

 恋人をつれてどこかのホテルのスイートルームのような部屋まで戻って(実際にはそんなところに泊まれる経済的余裕はないのだが)ようやく一息ついて、ルームサービスで白ワインとグラスを二つ頼んで、ベッドに倒れ込んだ。恋人は私がそこまで疲れている理由が分からないという風だった。身体的には疲れていない。私はあの男の妙な微笑みを(そして奇妙な裸体を)見せたくないと思って、混乱しながら変な気遣いをしていたので疲れたのだ。すぐにでも眠りたかった。

 ホテルの部屋の外は丸の内に似ていた。例の岬からは随分遠くまで戻って来たのだろう。恋人は潮っぽくべたべたした体を洗い流そうとシャワーに入っていた。

 部屋のドアーがノックされたので、ルームサービスだと思って、私は起き上がり扉を開けた。そこに、裸の男がいた。正確には、ホテルマンの格好をした裸だった男がいた。白ワインとグラスを乗せた盆を片手に、嫌な作り笑いをして立っていた。

 

  ※

 

 わたしはそこで大きな叫び声をあげた。自分の声で目を覚ました。日が暮れた自分の部屋だった。お腹が空いていたし、疲れていた。白ワインは誰も用意してなかった。恋人と会うのは明日の夕方だった。

 あ〜。嫌な夢だったので自分一人で抱えていたくないと思って書き記した次第。