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映画『タクシードライバー』を見た

 映画『タクシードライバー』をみた。

 DVDを注文するときに、勢いでamazonプライムに入会した。せっかく

プライム会員になったので、今日は映画を観ていた。

 

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 はじめてみたのは中学生の頃だった。中学生の私は、兄に勧められて観た『セブン』や『ユージュアル・サスペクツ』のような、90年代の暗鬱な雰囲気を反映したような映画にハマっていた。多感な時期にあんな暗い映画を見るべきではなかったのだと思う。わたしは案の定、暗い人間になった。暗いし、世の中に対して斜に構えている。反出生主義のようなことを、両親や教師の前でも口走った。嫌な子供だっただろうし、今でもお世辞にも正統派な人間とは言えない。

 暗い映画には系譜がある。監督のインタビューを読みあさっていると、バイオレンスはなんとかという映画、犯人像はなんとかという映画からインスパイアされた、と語っている。そこであげられる映画の名前は、『時計じかけのオレンジ』や『タクシードライバー』、『続・夕陽のガンマン』などだった。そして私の映画の好みは時代を遡った。

 キューブリック、コッポラ、初期のスコセッシなどなど。14歳や15歳の子供がみて理解できる映画ではないような気がするけど、それでも感銘を受けていた。同い年の子供たちが流行りのハリウッドのアクション映画にハマり始める頃、私はアメリカンニューシネマを観ていた。

 

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 主人公のトラヴィスは孤独だ。ニューヨークのダウンタウンを夜な夜な運転して周りながら、街への嫌悪感を募らせる。売春、ポン引き、強盗。世間では大統領選が云々と騒いでいるが、新しい大統領がその腐敗を無くせるとは到底思えない。自分を理解してくれる人もいない。手を差し伸べてくれる人も。

 トラヴィスの孤独は、鬱々とした思春期の私の心情に共鳴した。思春期の私は世の中のことを知り始め、たくさんの理不尽、建前、独善的な大人たちに嫌悪感を抱いていた。当然誰も私を助けてくれないし、私も誰にも助けを求めるつもりもなかった。

 誰かを傷つけたかった。筆箱にカッターナイフを忍ばせて、強くなったように感じている。そんな中学生だった。しかし結局何もすることができない。私の心の中では激しい嵐のような感情が渦巻いていたけれど、それが私の行動をどうこうするということはなかった。ただ焦りながら、時間がすぎた。いつのまにか大人になっていた。

 トラヴィスはありえないスケールの妄想をもとに行動する。一介のタクシードライバー風情が、街の腐敗を粛清しようというのだ。無理にきまっている。しかし、世の中に対して暴力をもって働きかけようという彼の気概に、中学生の私は自然に感情移入していた。大統領候補も殺してほしいし、ポン引きも殺してほしい。自分を理解して、愛してくれる人間以外全員殺してしまえ、と思った。果たしてそんな人はなかなかいないのだけど。

 

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 今日あらためてみたみたら、このトラヴィスを「狂気」だと呼ぶひとの気持ちがようやくわかった。評論やらブログの感想やらを読んで(え、どこが狂気なの?) と思っていたのだった。

 自分を傷つけてこない街の人間(いや、卵とか投げつけて来る子供はいたけど、あれは誰でもいいんでしょ)に対して、あんな風に勝手に一人で怒りを募らせて、一目惚れした女の子の職場にまで押しかけて、以前に乗せそうになった客の女の子を「救いたい」とか言ってる。孤独が彼の視野を狭めているのだ。ある程度は共感する部分もあるけど、微笑みをたたえて行動するようになってからは、病の進行を見守るような気持ちが大きくなった。世の中に対して、私がそんなに不満じゃないからだと思う。アメリカンニューシネマは、人生に不満な人間と、満足してる人間とで、全然見方が変わるんだなあ。

 

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 しばらくはアマゾンプライムのビデオで趣味の時間が充実しそうだ。宣伝じゃないよ。